09 ユーリ役 鳥海浩輔

――『アルテ』の第一印象はいかがでしたか?
女性が活躍するのが難しかった時代を舞台に、一人の画家として前向きに進んでいこうとするアルテがとても魅力的に見えました。アルテの成長物語でありつつ、彼女以外のキャラクターが一人一人丁寧に描かれているのもいいな、と。特に、アルテが師匠のもとを離れ、一人で頑張るヴェネツィア編。カタリーナとの交流がよかったです。
――アニメではついにユーリが登場しました。鳥海さんから見て、ユーリの印象はいかがですか?
掴みどころのない人物ですね。最初はとてもいい人そうに出てくるんです……いや、いい人だとは思うんです(笑)。でも、器の大きさや優しさを見せながらも、腹に一物あるような底の見えない人物で、実際、目的のためには手段を選ばないそぶりも見せます。人間のずるい部分や人を翻弄する部分を持っているんですが、それがかえって人間として魅力的に見えるという、個人的にすごく好きなタイプでした。演じていて楽しかったです。
――「掴みどころのない人物」とのことですが、演じる上でも大変だったのでしょうか?
特に大きなリテイクはなかったんですが、「方向性はそのままで、もっと淡々と演じてください」というディレクションをいただいた記憶があります。確かに、ユーリは常に笑顔を振りまきながら、たまに冷たい一面を覗かせるキャラクター。よりミステリアスな印象を持たせる表現を大事にしました。
――今後はヴェネツィアが舞台となっていきますが、もう一人重要なキャラクターとしてユーリの姪であるカタリーナが出てきます。ユーリと彼女の関係性についてはどうご覧になりましたか?
ユーリは一見すると一つのことに執着しなそうなタイプですが、実は何をおいてもカタリーナのために行動している人です。物語が進むにつれてユーリのカタリーナへの強い想いを知った時、何か一つのために行動できる人だと分かったときは驚きました。実は、原作はあえて読まないようにしているんです。画(え)の構図や演出で原作と見せ方が変わることがありますし、原作を先取りして思い込みで演じたくなくて。ユーリも先入観を持たずに演じられたので、彼の新しい一面がどんどん明らかになっていくのは面白かったです。
――キャラクター紹介にも書かれていますが、カタリーナを溺愛する姿も見られる……?
普段のユーリは何を考えているかわからない部分があります。でも、カタリーナとのやりとりを見ると、子煩悩でなんでも許しちゃう叔父さんなのかなと(笑)。ユーリのかわいらしい一面が見られると思います。
――カタリーナ自身については、どんな印象を持ちましたか?
これまでの家庭教師を困らせてきたようにアルテのことも困らせる女の子ですが、一つのキーポイントは「この時代における女性」というテーマだと思います。アルテがそうであるように、やりたいことに向かって邁進しようとしても大きな壁が立ちふさがる。ある意味、カタリーナもアルテと同じような女の子なんです。登場して最初は、かわいげのない部分が強調されていますが(笑)、お話が進んでいくにつれてそのチャーミングなところが見えてきて、どんどん魅力的になっていきます。ユーリが保護者目線になってしまうのも頷けます。
――ユーリもカタリーナも、そしてアルテやレオもそうですが、どのキャラクターもすごく人間らしいですよね。型にはまったイメージではないといいますか。
登場人物が決して多いわけではないので、どのキャラクターもワンクールの中でしっかり深掘りされていて、みんな魅力的に見えますね。それは、何よりアルテの存在感が大きいからだと思います。最初はアルテに対していろんな思いがあるにしても、アルテが太陽のような存在だから、いつしか彼女を中心にみんなが何か一つに向かっていく……。この物語は、そういった「みんなの物語」なのかなと感じました。
――アルテは周囲にいろんな影響を与えていく人ですよね。
そうですね。現実世界で考えると、この時代背景でここまで自分のやりたいことを貫くのはとても難しいと思うんです。それでもアルテは悩みながら、挫けそうになりながら夢に向かってまっすぐ進んでいく。そういう強さが太陽のように感じられると言いますか。ある意味、みんなが想像する王道少年マンガの主人公のような、常に真ん中に立って成長していくキャラクターだなと思いました。
――ユーリ自身は、アルテをどう見ていると感じましたか?
アルテをヴェネツィアまで連れてきたのは、カタリーナのために利用できるからだと思うんです。だから、かなり強引なところもありましたし、貴族という立場を利用したところもありました。監督から「ユーリは悪い人なんです」と言われたこともありましたが、まさに姪のためなら自分の持てるあらゆる力を使う悪い人です(笑)。ただ、ユーリにとってはカタリーナの想いを叶えることが重要なので、アルテがその心を開ける人だと見抜いているような気がします。
――アルテとは業種こそ違いますが、声優も同じクリエイターの一つだと思うんです。職業人としてのアルテに何か共感した部分や魅力を感じた部分はありますか?
確かに、我々声優も見えない部分でどれだけ努力しているかが結果に出る職業です。日常生活の中でどういうモノを見ているのか、何を考えているか、どれだけ練習しているかが収録に全部跳ね返ってくるので、そういう意味ではアルテやほかのクリエイターさんと重なる部分はあると思います。師匠と弟子の関係もそうですね。アルテにレオがいるように、僕にも師匠と呼べる人がいます。でも、師匠に教わる部分は土台のみで、そこから幹をどれだけ太くできるか、枝葉をどれだけ多くできるかは、自分次第。常にどれだけアンテナを張り、準備をしているかが大きく影響してくるんです。そういう部分も近いと思います。
――結果だけを見られてしまうという大変さもあるのではないでしょうか?
どうしても評価されるのは結果ですからね。感性を研ぎ澄ませて練習をいっぱいしたからといって、必ず結果に繋がるわけではありません。だからこそ、少しでも結果に繋げるために準備を怠らないことが大事だと思うんです。報われない努力もいっぱいありますし、結果に表れるものなんて努力したうちの一部だけということもあります。そういう意味ではシビアな面は当然あるんですが、それは声優を含めたクリエイターの宿命なのかなと思います。
――最後に、放送を楽しみにしている方へ一言お願いします。
ヴェネツィア編に入り、ここからアルテとカタリーナの物語が中心になっていきます。頑なになっているカタリーナの心をアルテはどうほぐしていくのか。一人の女の子との交流を経て新たに悩んだり、成長したりする姿がじっくり時間をかけて描かれていくので、その姿を見ていただければと思います。ユーリもいいスパイスになっていると思うので、楽しみにしていてください。