07 レオ役 小西克幸

――原作との出会いを教えてください。
もともと原作のマンガに声がついたコンテンツ(アプリ「マンガほっと」内のマンガ読み聞かせコンテンツ「声優語り」にてレオ役を担当)で、何話かやらせていただいたことがありました。今回、TVアニメ化の際に改めてオーディションを受けさせていただいたんですが、「『アルテ』面白いから、またやりたいな」って強調しておきました(笑)。
――どんなところが面白いと思いましたか?
物語が面白いですし、何よりどんなときでも前向きなアルテが魅力的ですね。画家をモチーフにした作品もあまり触れたことがないですし、自分が知らない時代のお話なので、それが細かく描写されているところに興味をひかれました。
――確かに絵画や画家を取り上げた作品はそう多くないですよね。
現代の漫画家さんのお話とかそれこそアニメ業界を舞台にしたものとか、そういうものに触れることはありますが、16世紀の美術がテーマの作品はあまり見たことがなかったので、とても新鮮でした。
――小西さんが演じるレオの印象はいかがですか?
口下手でどこかぶっきらぼう、体もでかくて、いつも眉間にしわを寄せているので、ぱっと見た印象は“怖い人”ですね。でも、実際は人情味があって面倒見もいいし、心根は優しい人なのかなと思いました。
――レオは、女性が画家になるのが難しい時代に、アルテの弟子入りを認めます。
レオは女性だからとか誰々だからとか、先入観で物事を決めない人です。偏見がないのは自分自身も徒弟時代に苦労しながら頑張ってきて、いろんなものを見たり、感じたりしてきたことも大きいと思います。ですが、何より自分のやりたいことに向かって一生懸命突き進んできた人なので、彼にとって大事なのはそこなんです。だから、ひたむきなアルテにかつての自分を重ねてしまうんでしょうね。
――レオを演じる上で、どのようなことを意識しましたか?
ぶっきらぼうで一見すると無愛想なキャラクターって声質が大事だと思うんですが、自分の声はどちらかというと軽い音になってしまうので、演じるのが難しいんです。軽すぎてはいけないし、あえて怖さを作ってしまうとレオじゃなくなってしまうので、そのバランスに気をつけるようにしました。普通に喋っているけれど、たまたまぶっきらぼうに聞こえて、相手が勝手に勘違いしてしまう、そういうバランスです。
――それはオーディションのときからですか?
マンガに声をつけたときから意識していました。
――オーディションでもその方向性を大事にされたのでしょうか?
そうですね。ただ、やっぱりレオの持つ雰囲気を出そうとすると、怖くするつもりはないのにどうしても怖く演じがちになるので、音響監督のえびな(やすのり)さんと相談しながら演じさせていただきました。それがあったので、実際にアフレコがはじまってからは大きな修正はなかったですね。テストのあとにちょっとした軌道修正があるくらいでした。
――浜名孝行監督がレオは「難しかっただろうな」と、インタビューでおっしゃっていました。
難しかったですよ(笑)。表情に出ていない部分をすくいとっていかないといけないので。言い換えると、見ている方に「レオは何を考えているんだろう?」って表情や芝居からその内面を汲み取ってもらう、解釈を委ねるということでもあるので、その意味ではやりやすかったですね。
――先ほども少し話題に出ましたが、改めてアルテのどんなところに魅力を感じましたか?
落ち込むことがあっても、決してマイナスに考えないところですね。どんなことがあっても「これは自分にとってプラスになるんだ」って切り替えて、踏ん張って立ち続ける。その強さがすごいなと。実際、どこまで頑張って耐えているのか、それとも本気で楽しんでいるのかはわかりませんが、あの立ち振る舞いはカッコいいなと思います。僕はホント、後ろばかり見てしまうので(笑)。
だからアルテのような前向きさがあったらいいなって羨ましくなります。きっとアルテだって、つらいとか大変だって苦しむことがあると思うんです。でも、そこからプラスになることを見つけて、自分の楽しいと思える方向に向かっていける。すべてをプラスに変えていける力って、本当に素敵です。
――アルテとレオの関係性はどう感じましたか?
レオはすべてを語らず、自分の作業を手伝わせながら仕事を覚えさせていくところがいいですね。弟子に何かを教えるときって、あれこれ細かく教えて引っ張っていくやり方もあれば、多くを語らず背中を見せて覚えさせるやり方もあると思うんですが、いずれにしても大事なのはお互いにリスペクトしているかどうかだと思うんです。この二人は言葉数こそ少ないけれど、信頼関係がきちんと出来上がっているのが伝わってきて、素敵な師弟関係だなと思いました。
――その関係性を表現するにあたって、アルテ役の小松(未可子)さんとの掛け合いで意識したことはありましたか?
小松さんがアルテという女性を明るく楽しく、活き活きと演じてくださっているので、僕はもう見ているだけですね(笑)。物語としてはレオがアルテを引っ張っていますけど、お芝居に関してはアルテに引っ張ってもらっているような感覚です。本当に真っ直ぐで元気なアルテなので、レオとしてもなんとかしてあげたいって気持ちになるでしょうし、手を差し伸べてあげたいって思うんじゃないかな。それぐらい小松さんのお芝居はアルテの魅力を引き出していると感じました。
――小西さんには、師匠と呼べるような人はいましたか?
特にはいなかったですね。でも、アルテに重なる部分はあります。学生時代は先生がついてくれていろいろ教えてくれるのに、社会に出たら誰も何も教えてくれなくなることって、社会人だったらよくありますよね。声優もそうで、養成所では先生が細かく教えてくれたのに、現場に出たら先輩たちがやっていることを見て、それを盗んで学ばないといけない。まさにアルテがやっていることと同じです。アルテも手取り足取り教えてもらうわけではなく、レオの仕事を見ながら独学で絵を学んでいく。そういう意味では、声優もずっと修行中みたいなものなのかなって思います。
――本作はイタリアのフィレンツェが舞台ですが、小西さんはイタリアへ行ったことはありますか?
イタリアはないですね。ヨーロッパはアニメのイベントでパリに行ったぐらいなので、イタリアも行ってみたいです。アフレコのときに、マイクに向かって大きな声で「イタリア行きたいなぁ~」って小松さんとよく言っていました(笑)。いつかイベントか何かで行けたらいいですね。
――最後に、放送を楽しみにしている方へ一言お願いします。
まず時代背景がすごく面白いです。この時代ってこういうことがあったんだという発見がありますし、美術に関しても自分たちが普段何気なく見ている作品を作っていた時代の話なので、きっと興味を持ってご覧いただけると思います。僕自身も、この時代は工房という場所があってみんなで芸術作品を作っていたんだって新しい発見がありました。そして、なんといってもアルテというキャラクターですね。とにかくパワーを持った子なので、仕事のあと疲れているかもしれませんが、彼女が努力する姿を見るときっと元気をもらえるはずです。彼女の頑張りを自分の糧にしていただけたら嬉しいです。