05 EDテーマアーティスト/ダーチャ役
 安野希世乃

――最初に本作に触れたときはどんな印象をお持ちになりましたか?
原作を読ませていただいて、時代背景や舞台の描写がなんて細かいんだって思ったのが第一印象でした。キャラクターや街並みの描き込みが細かくて、コマの密度がすごいって感じたんです。色がついていないのに、カラーの風景が浮かび上がってくるようで、大久保(圭)先生はこの作品にものすごい情熱を込めているんだなって、その重みが伝わってきました。
――物語についてはいかがでしたか?
女性が独り立ちするのが難しい時代に、年若いアルテが自分の腕一つで生きていこうとする、その強い意志に心を打たれました。異端扱いされるアルテが、めげずに前へ進んでいく姿が本当にカッコよくて。時代や場所に関係なく、逆境に立ち向かっている人だったらきっと励まされるし、勇気をもらえる作品だと思います。
――EDテーマを担当していらっしゃいます。『晴れ模様』はとても爽やかな楽曲ですね。
デモ音源を聴いたとき、海のイメージがぱっと広がったんです。夕陽が落ちる寸前、ピンクと青が混じり合うような空の下、遠浅の海辺で真っ白な服を着て裸足で歩いているような、そんな静けさを感じるちょっと切ない曲だなって。最初に聴いたデモ音源はシンプルなアレンジだったんですが、いろんな楽器が加わった完成版では、その静けさが少しずつ鼓動を早め、終盤に向かってグッと盛り上がって明るい気持ちになっていく、より前向きなメッセージを奏でる楽曲になりましたね。
――レコーディングでもその内省的なイメージを大切にされたんですか?
最終的なアレンジを聴いたときは、今度は朝のイメージが広がって。原作でアルテがレオさんに弟子入りして、屋上の掘っ立て小屋で朝を迎えるシーンがあります。 窓を開けると眼下に街並みが広がり、朝の空気に包まれながらここから新しい生活がスタートするんだって気を引き締めるシーンです。その情景をイメージして歌いました。
――確かに一日のはじまりのような胸の高鳴りを感じます。
そして2番になって曲が進んでいくとだんだんお昼が近づき、さらに気持ちが高まっていく。街や人が活気づいて、活き活きとした雰囲気になっていきます。そういう時間の移り変わりが感じられるのも面白いと思いました。レコーディングのときに音楽プロデューサーの福田(正夫)さんと打ち合わせたときのメモが残っているんですが、2番のAメロのところに「午前11時」って書いてあるんです。
――それが時間経過のイメージですか。
そうです。レコーディングするときのポイントになりました。1番は朝のイメージでいいと言われ、「2番はもう午後なんですか?」って伺ったんです。そうしたら「まだギリギリ朝です」と返ってきたので、「午前11時」とメモしました。
――レコーディングで苦労したポイントはありましたか?
それがほとんどなかったんです! 聴いていても、歌っていても気持ちのいい曲で。歌を録り終えてから、一人でいるときとか自転車に乗っているときとかにしょっちゅう口ずさんでいます。それぐらい馴染んだ曲でしたね。歌詞の内容が今の私の心境に近くて、心のままに歌えたからかもしれないです。
――例えば、どういったところが近いと感じました?
例えば、1番のサビですね。「優しいままをただ描こう」というフレーズに、「わかる!」って納得したんです(笑)。絵を描くって描写するということでもありますよね。ものの輪郭を自分なりの解釈で切り取っていく。演じることも同じで、受け取って感じたことを音に変換して描写するんです。テクニックやコツはあるけれど、出来上がったものにはその人が世界をどう見ているかが、感性の鏡のように表れる。それが個性なんだと思いますし、だからこそ自分の心のままに演じていきたいって思うんです。絵もお芝居も同じなんだなって共感しました。
――絵もお芝居も同じものを描写しても、きっと出来上がるものは千差万別ですよね。
そうなんです。きっと皆さん「このキャラはこういうことがあったから、こういう感情でこの台詞を言っている」って自分なりに解釈して演じているので、同じキャラクターの台詞でも役者さんが違えば必ず違うものになるんです。それは役者も画家も同じだと思います。正解はないし、かといって面白いだけが正義でもない。本当に人それぞれです。そういう思いがあるので、「描こう」という部分が自然と「演じよう」に置き換わるくらいしっくりきました。
――安野さん演じるダーチャの第一印象はいかがでしたか?
ダーチャはお針子仕事の仲間たちにうまく馴染めず、一人で黙々と仕事をこなす女の子です。今の環境に馴染みすぎると自分から成長を諦めることになるかもしれない。そんな不安を抱えて、まわりに壁を作っている印象がありました。裏返せば、向上心があるということなので、独り立ちしたいって考えているアルテと似ている部分があるなと感じます。
――アルテとはどのような関係性になるのでしょうか?
キャラクター説明にもありますが、アニメではすでにアルテと信頼関係が生まれている状態で、アルテにたくさん影響を受けた、彼女を心配する友人の一人として描かれます。ダーチャにとって、アルテは勇気や刺激をくれる存在。仲良くなりたいと思ったのは、きっと自分にはなかった理想の女性像をアルテに見いだしたからだと思います。
――演じる上ではどんなことを意識されていますか?
内気で真面目な子なので、アルテと仲良くなっても大人しい雰囲気はあったほうがいいかなって最初は思ったんです。でも、音響監督さんから「もう少し粗野な感じがあっていいですよ」というディレクションをいただいたので、もともと持っている気の強いところを出すようにして、自然体でアルテと向き合うようなお芝居を意識しました。
――最後に、『アルテ』の放送を楽しみにしている方へ一言お願いします。
アフレコのときにはほぼ映像が完成していて、情報量が多い原作をアニメーションで再現するぞというスタッフさんの並々ならぬ熱意を感じました。それは役者陣も一緒ですし、きっと音楽や音もそうだと思います。あらゆる角度からあの時代を表現する意欲的な作品になると確信しているので、放送を楽しみにしていてください。

 
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